2013年6月10日、文藝春秋の特集『ユニクロ柳井社長の「黒い論理」』にて、『ブラック企業 日本を食いつぶす怪物』の著者である今野晴貴氏が、ユニクロから「訴える」との脅しの通告状を受け取っていたことを明かしました。
ユニクロ『ブラック企業』著者に「警告」 「違法な論評など2度となされませんよう…」

最近のブラック企業に対する若者の危機意識の高まりから、今ユニクロがスポットライトを浴びている状況で、職場環境、人事システム、柳内会長の発言など、ユニクロという企業の実態が様々な点から問題視されています。

そこで、最近のユニクロに関するニュースを、ブラック企業という文脈に関連するものに絞り、時系列にまとめてみました。

 

新卒社員の3年内離職率が5割を超える

2013年3月9日、週刊東洋経済に、特集『ユニクロ 疲弊する職場』が記載されました。
同誌の取材に対しユニクロは、「新卒入社社員の3年内離職率は、08年入社46.3%、09年入社53.0%、10年入社47.4%、11年入社が2年間で41.6%」と回答しました。
また、「12年8月期はユニクロの店舗正社員における休業者のうち、42.9%がうつ病などの精神疾患」と、「店舗正社員全体の約3%が精神疾患で休職している計算」になるとのことです。

他のアパレルとは全く異なる大量の業務と、月間労働時間は240時間が上限という「鉄の掟」。
そうした職場環境の矛盾がサービス残業の常態化につながり、高い離職率や精神疾患を生み出しているとの見方ができます。

 

ユニクロの徹底的な合理主義

2013年3月14日、元ユニクロのスタッフ、大宮冬洋氏が『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』を記し、話題になりました。
同氏の記事が東洋経済誌に寄稿されています。
ユニクロ社員が不幸になる”合理的な”理由

同氏はユニクロの10年内離職率は8割を超すと推測できるとし、その理由をサービス残業などの理不尽さというよりも、ユニクロの「完全実力主義」の人事方針に恥じない徹底的した合理主義に帰着できるのではないかと考えます。
結果がすべての世界で、店舗を上手く管理することができなければ、「なぜできないのか、いつまでにどうやって改善するのか」という厳しい追及の対象になり続け、自信と気力を少しずつ失っていく。
同氏はユニクロを「常に結果を求められるプロスポーツチームのような会社」と例えています。

 

甘やかして、世界で勝てるのか

2013年4月15日、日経ビジネス誌に、特集『甘やかして、世界で勝てるのか ファーストリテイリング・柳井正会長が若手教育について語る』が記載されました。
同誌の取材に対し柳井会長は、現在の日本人がグローバルで活躍できる人材になることの重要性を謳いつつ、

「「ブラック企業」と言われるようになったのは、我々がグローバル戦略を本格化してから」
「若いころに甘やかされてはいけないと思っている」
「「ナンバー2でいい」と思っている人は、ナンバー2にすらなれない」

と語り、物議を醸しました。

 

年収100万円も仕方ない

2013年4月23日、朝日新聞に柳内会長へのインタビュー記事が記載されました。
「年収100万円も仕方ない」ユニクロ柳井会長に聞く

以下、抜粋になります。

――いまの離職率が高いのはどう考えていますか。
「それはグローバル化の問題だ。10年前から社員にもいってきた。将来は、年収1億円か100万円に分かれて、中間層が減っていく。仕事を通じて付加価値がつけられないと、低賃金で働く途上国の人の賃金にフラット化するので、年収100万円のほうになっていくのは仕方がない」
――付加価値をつけられなかった人が退職する、場合によってはうつになったりすると。
「そういうことだと思う。日本人にとっては厳しいかもしれないけれど。でも海外の人は全部、頑張っているわけだ」

柳井会長の労働や雇用への正直な考え方が、「年収100万円も仕方ない」「うつになっても仕方ない」といったセンセーショナルな文脈で社会に伝わり、この記事は大きな話題となりました。

 

そして先日、『ブラック企業 日本を食いつぶす怪物』の著者、今野晴貴氏に対する「通告状」がニュースになったわけですが、皆さんはこの一連のニュース、どうお考えですか?

柳井会長のロジックである、
日本市場が縮小の一方なので、国内企業は海外に出て行くべきである。

そのためには、グローバルに活躍できる人材育成が必要だ。

グローバルスタンダードな基準を取り入れなければならない、つまり社員を甘やかすなんてもってのほかだ。
というのは一見、経営的には正しいもののように思えます。

しかし、ユニクロは低価格・高機能をウリにした商品戦略であり、店舗人件費を増やすという考えがありません。
また、店舗勤務を続けることによって、グローバルな経営が本当に学べるのかどうか、というところも疑問です。
(ユニクロは本社と現場のキャリアが完全に分断されてしまっている、と聞きます。)
そうすると、柳内社長の言う「社員を甘やかさない」というのは、単純に膨大な量の仕事を安い賃金でやらせる、という話にも聞こえてしまいます。

グローバルで戦うには、必ず犠牲が必要になってしまうのでしょうか?
いずれにせよ、「価格が安いにはワケがある」と思わざるを得ません。