ほとんどのショップにおいて、接客方針として客に積極的に話しかけることをよかれとし、店員をそのように教育しています。
人によっては、「放っておいてくれ」と思う人も多いようで、ショッピングに対する障壁が高くなっているというか、「あの店、商品はいいけど接客がしつこいからネットで買うんだよねー」というような事態まで発生することもしばしばあるようです。

過剰に積極的な接客を回避するためのノウハウとして、「ヘッドフォンを付ける」とか「話しかけられても無視をキメ込む」とかいろいろあるようですが、できれば相手の尊厳を守った上で上手くやりこなしたいと思う人も多いことでしょう。
幸いにも、割とどの店も接客パターンが標準化されており、ケーススタディとして「こう言われたらこう言う」ということが通用する話だと思うので、それを考えてみましょう。

店に入ります。
なんとなーく、陳列されているTシャツのグラフィックがどのようなものか気になり、広げて見てみます。
しっかりと店員の教育がされている店では、あなたのこの動作を見逃しません。
「Tシャツを広げる」、「ハンガーラックからジャケットを取り出す」、こういった瞬間は、店員としては話しかける絶好のポイントなのです。

 

ケース1「よろしかったら、ご試着くださいね。」

こうきた場合は、チャンスです。
すかさず「はい。あ、でも見てるだけなので大丈夫です。」とキメましょう。
英語で言うと「I’m just looking.」ですね。
ショップ店員は、見込みのない客に対してしつこく話しかけることはしません。
単純ですが、その後に話しかけられる可能性をぐっと低くする良い方法であると言えます。
「鏡があるので合わせてみてください。」「サイズもあるので、お探ししますよ。」とかもこれでイケます。

 

ケース2「今シーズンのテーマが○○になっておりまして、そのTシャツのグラフィックも…」

蘊蓄を語りだすパターンですね。
手に取った商品自体がそんなに興味のないものだったとしたら、これが一番厄介かもしれません。
セレクトショップでよくあるパターンです。
適当に相槌を打つのもいいのですが、一通り店員の説明が終わった後の何とも言えない微妙な空気感。
そこでいい言葉があります。
「いくらですか?」です。
英語で言うと「How much?」ですね。
タグを見ていたとしても、見ていなかったフリをして聞いてみましょう。
それだけ蘊蓄のある商品なら、結構な値段がするはずです。
すかさず「あー、ちょっとごほうび価格かもしれませんねー。(苦笑)」と気の利いた答えを返しましょう。
「気に入った商品があったとしても高い値段は出さない堅実派の客」と店員に思わせることができたら、こっちの勝ちです。

そんなこんなで店員の接客をやりすごし、これいいんじゃないかなーと思うデニムが見つかりました。
値段もまあまあするし、試着しようかと思います。
そこであなたは、「試着してもいいですか?」と話しかけ、案内された試着室に行き、着替え始めます。

 

ケース3(試着室の外から)「サイズいかがですかー?」

たいていの店では、監視カメラでもついているんじゃないかと思うぐらい絶妙なタイミング、つまりちょうど服を着終わってどうかなーと考えを逡巡し始めてちょっとたったぐらいのタイミングで、「サイズいかがですかー?」と声をかけてきます。
サイズが合わないと感じた場合は、取り替えてもらえばいいでしょう。
問題は、実際に着てみても買うか買わないかの決断が着かない場合です。
そういう時はドア越しに、「いい感じでーす。ちょっとゆっくり考えますね。」と言い放ちましょう。
決して、ドアを開ける必要はありません。
開けた途端に、店員は商品ごとに設定されているであろうセールストークを繰り広げ、ケース2に戻ってしまうことが想定されます。
店員がいなくなったことを察知してもとの服に着替える際に、本当にゆっくりと考えればよいのです。

デニムを履いてみたものの、やはりまだ買うかどうかの決断ができないあなた。
とりあえず、商品を持って試着室を出ます。
よく教育された店員は、あなたが試着室から出るその瞬間をしっかりと察知し、自然を装って接客の機会を伺います。
成約につながる最終ポイントとして、ここでの接客は力が入るのです。

 

ケース4(試着後に)「いかがでしたか?」

ここまできたらもう簡単。
「そうですねー、候補リストに加えておきます。」
これが一番スマートな返しです。
余裕があるなら、持っている商品を差し出し「一旦戻しておいてください。」と付け加えておきましょう。
もうこれ以上、店員がセールストークを繰り広げることはありませんし、それなりの成果で満足しているはずです。
そのまま一旦店を出て、冷静になって本当に買うかどうか考えましょう。
やっぱ欲しい!となって、また同じ店に戻ってくるという購買行動は、ショッピングにおいて何ら不自然ではありません。

実際には、ここに書ききれなかったパターンも存在するかと思われます。
しかし、ちょっと言葉を知っているか否か、「見てるだけ」「ごほうび価格」「考えます」「候補リスト」といった言葉を知っているかどうかだけで、いろいろ応用は効くし、「自分のペースで買い物をする客」だということを、相手に嫌な思いをさせずに伝えることができるのです。

ショッピングは本来、楽しいはずのものです。
店員の接客が煩わしいと思う人は、是非このノウハウを使用することで、快適なショッピングライフを楽しみましょう。